良く聞かれる。
歩いているとよく呼び止められる。たとえどんなに周囲にひとがたくさん居ても、何故かまっしぐらに向かってくる。そして何かを尋ねられたり、紹介されたりする。
今日赤羽橋のあたりを歩いていたら、わたしが追い越した若い男性が後ろから駆け寄ってきて、
「下北沢って、どっちですか?」
と尋ねられた。
正直わたしは方向音痴だ。そもそも東西南北の把握が出来ない。そして上京四年目になろうとしているのに、職場と自宅と友人の家のある駅くらいしか行き来せず、殆ど都内の様子がわかっていない。だから下北がどっちか、って言われても非常に困る。いや、先週スープカレー食べに友人たちと出かけたばかりなんだけどもさ。
「こ、ここからは遠いので地下鉄を利用されたほうが……」
もう全然答えになってないし自分。とりあえず赤羽根橋駅から、渋谷まで行って乗り換えたら? ということをしどろもどろに説明すると、お兄さん、手元から地下鉄路線図を出して。
「駅はどこにありますか?」
た、確かこのあたり、というところを探してやっと発見。これですこれです、とまるで探していたのが自分であるかのような勢いで説明し、じゃ、あの信号左手に駅がありますんで、と別れる。
……あ、信号一つ渡るんだった!
と気がついた時には後の祭り。お兄さんに一本間違って教えた気がする。とてもする。すっごくする。
……あのお兄さんが無事目的地に辿り着けましたように……。ああもう、ごめんなさい……。